地理・空間フィールドワークI
「地理・空間フィールドワークI」は,教養学部後期課程の学際科学科地理・空間コースに進学が内定した学生を対象とした,2年次Aセメスターの通常の授業期間終了後の春休みに実施している,3泊4日~4泊5日程度の合宿形式の巡検(野外実習/フィールドワーク)の授業です.
毎回国内の特定の地域を定め,「〇〇市の農業/製造業」といったように,大きなテーマを参加者で共有し,通常の授業期間中の「地理・空間調査設計I」で,文献・資料の収集・精査,国勢調査をはじめとする各種統計分析,調査設計等の作業を積み重ねた上で,巡検本番に臨みます.巡検期間中は,終日濃密なスケジュールを組んで,現場の当事者の皆様や行政等の機関からの聞取り,現地観察を行い,夕食後のゼミでその日の成果を振り返り,議論します.連日のメニューをこなしていくことは楽ではありませんが,最終日前夜の打ち上げでは,それに見合う達成感を皆で共有することができるでしょう.
本授業は,学生の皆さん一人一人のより自主的・主体的なテーマ設定・調査が求められる3年次Sセメスターの「地理・空間フィールドワークII」,そして4年次の卒業論文研究につながる最初のステップとして,事前の準備作業,事後のレポート/報告書作成も含めたフィールドワークを通じた調査・研究の基礎的技能の習得に力点を置いています.
2024年度Aセメスターの地理・空間フィールドワークIでは,地方の県庁所在地以外の地域経済圏を構成する地域の事例として,愛媛県八幡浜市を取り上げ,深い入江の港湾・市街地を見下ろす急傾斜地の柑橘畑の景観に圧倒されながら,基幹産業である柑橘農業,水産業の構造や変容,課題を探りました.



地理・空間フィールドワークII
「地理・空間フィールドワークII」は,3年次の夏休み中に実施される合宿形式のフィールドワーク(野外実習)で,参加者はある地域を拠点に3泊4日の合宿を通じて,自ら設定したテーマに沿った調査を行います. 野外実習に先立ち,3年次のSセメスターに開講される「地理・空間調査設計II」では,調査地域やテーマに関する文献,統計,その他の資料を検討し,現地での調査計画を策定、さらには現地調査に向けたアポイント取りなどの準備を進めます. 本番の野外実習では,各自が現地に赴き,現地観察,聞取り調査,資料の収集を自ら行い,聞取り調査の際には必要に応じて教員やティーチング・アシスタントが同行してアドバイスを提供します. 毎晩行われるミーティングでは,当日に得た知見を報告・議論し,調査の収斂に向けたアドバイスを受けながら,参加者自身が主体的にインタビューをリードすることで,実践的な体験が可能となります. 実習期間中は張り詰めた日々が続きますが,最終夜には参加者全員で打ち上げを行い,濃密な時間を共有することで,多くの参加者にとって地理・空間コースでの最も印象的な体験のひとつとなります.
帰京後は,各自で調査結果をレポートにまとめ,教員やティーチング・アシスタントによる添削を重ねながら完成度を高め,最終的にはレポートを集約した報告書として刊行し,調査に協力してくださった方々に配布されます.
「地理・空間フィールドワークI・II」でのトレーニングを通じ,参加者は卒業論文に向けた独自の調査遂行力を着実に養っていきます.



1997年度以降の巡検先および報告書は以下のとおりです.
地理・空間コース野外実習報告シリーズ(旧・人文地理野外実習報告シリーズ)(【】内部は担当教員,実施年度・学期)
- 茨城県桜川村浮島地区の農業と社会【永田・1996年度冬学期】
- 木曽地域の産業と社会【荒井・1997年度夏学期】
- 埼玉県西部地域の産業と社会:小川町,寄居町を中心に【谷内・1997年度冬学期】
- 岩手県葛巻町の酪農と地域社会【永田・1998年度夏学期】
- 静岡市・清水市における都市と産業【松原・1998年度冬学期】
- 新潟県中条町・粟島浦村の産業と地域社会【荒井・1999年度夏学期】
- 千葉県銚子市・旭市の産業【谷内・1999年度冬学期】
- 東京都八丈町の産業【永田・2000年度夏学期】
- 変動する山梨の産業と地域【松原・2000年度冬学期】
- 岐阜県神岡町の産業とその変容【谷内・2001年度夏学期】
- 横浜市のスカーフ関連産業【荒井・2001年度冬学期】
- 新潟県相川町の産業と社会【永田・2002年度夏学期】
- 群馬の都市と産業の新展開【松原・2002年度冬学期】
- 山形県庄内地域の産業と社会【谷内・2003年度夏学期】
- 愛知県渥美半島の園芸農業【荒井・2003年度冬学期】
- 隠岐西ノ島の産業と社会【永田・2004年度夏学期】
- 北海道十勝地方の農業・農村【永田・2005年度夏学期】
- 栃木の都市空間と産業の変貌【松原・2004年度冬学期】
- 八王子市・郡内地域における繊維産業【荒井・2005年度冬学期】
- 長野県富士見町の農業と地域振興【谷内・2006年度夏学期】
- 茨城県日立市の産業展開と地域社会【松原・2006年度冬学期】
- 高知県土佐町の農業と地域社会【永田・2007年度夏学期】
- 神奈川県三浦市の農業と観光【荒井・2007年度冬学期】
- 大分県における地域開発の諸相【梶田・2008年度夏学期】
- 千葉県における産業と地域の変貌【松原・2008年度冬学期】
- 熊本県天草地域の産業と社会【永田・2009年度夏学期】
- 千葉県南房総地域の産業とその変貌【荒井・2009年度冬学期】
- 香川県における地域の諸相【梶田・2010年度夏学期】
- 愛知県における工業と地域の変貌【松原・2010年度冬学期】
- 長崎県平戸市の産業と社会【永田・2011年度夏学期】
- 広島県尾道市瀬戸田町における諸産業【荒井・2012年度冬学期】
- 金沢市周辺地域の産業と地域振興【梶田・2012年度夏学期】
- 長野県東信地域における産業と都市【松原・2012年度冬学期】
- 宮崎県西都市の農業と社会【永田・2013年度夏学期】
- 香川県小豆島の産業【荒井・2013年度冬学期】
- 福岡県の地域経済と社会【梶田・2014年度夏学期】
- 新潟市の産業と都市【松原・2014年度冬学期】
- 大分県佐伯市の産業と社会【永田・2015年度Sセメスター】
- 静岡県島田市の産業【荒井・2015年度Aセメスター】
- 十勝地方の地域経済と社会【梶田・2016年度Sセメスター】
- 置賜地方の産業と社会【松原・2016年度Aセメスター】
- 北海道余市の農業と社会【永田・2017年度Sセメスター】
- 広島市周辺地域の産業【荒井・2017年度Aセメスター】
- 「京都」の諸相/諸層【梶田・2018年度Sセメスター】
- 石川県白山市と周辺地域における産業とまちづくり【松原・2018年度Aセメスター】
- 酒田市の産業と社会【永田・2019年度Sセメスター】
- 三重県の産業と社会【松原・2019年度Aセメスター】
- 薩摩地方を視る【梶田・2020年度Sセメスター】
- 神奈川県の都市と社会【松原・2020年度Aセメスター】
- 新潟県十日町市【永田・2021年度Sセメスター】
- 高知県の産業と社会【梶田・2022年度Sセメスター】
- 高山市のものづくり産業【永田・2022年度Aセメスター】
- 仙台都市圏の震災復興とまちづくり【小田・2023年度Sセメスター】
- 東京都青梅市の産業の観望【鎌倉・2023年度Aセメスター】
- 本州最北の今を描く―青森県大間町を中心に―【梶田・2024年度Sセメスター】
※報告書刊行時期の関係で,実習を行った時期と報告書の号数が逆転しているものがあります.
現在報告書を作成中または実施予定の野外実習
- 愛媛県八幡浜市【永田・2024年度Aセメスター】
なお,前期課程において,永田教授が担当されている人文科学ゼミナールの授業では2泊3日~3泊4日程度の野外調査を実施しており,人文地理学におけるフィールドワークに触れる機会が設けられています。人文科学ゼミナールの巡検内容についてはこちらをご覧ください.
【教室学生用】巡検報告書執筆要領 2022年8月24日版 ダウンロード(ZIPファイル)